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道路の新規建設よりも既存の道路改良・活用を優先すべき

前回の記事では、無駄な道路事業とは何か?ということについて言及し、無駄な道路事情を論ずる時にその道路事業の必要性や地域の交通事情、経済、気候、地形、交通学的指標、自治体の財政などを踏まえたうえで議論するのが良いと書きました。

今回は日本全体の道路事業において自分の自論を書いていきたいと思います。

高規格道路の建設はこれ以上必要か?
地域によっては渋滞緩和のために、国道の改良のために必要な道路事業が多くあります。それはそれで必要だし、建設すべきだと思います。ですが、日本全体の平均をとって考えてみた時に、国道と高速道路共に日本全国を十分に縦断・横断しており、道路整備はほぼ行き届いています。

特に高速道路に関しては主要な都市や地域、言い換えれば本当に必要な路線というのはほぼ完成しており、残りの高速道路はそこまで必要性の高くない道路がほとんどです。個人的にメスを入れたいのはそのような高速道路です。

そのような必要性の低い道路は暫定2車線という形で整備されていますが、それが高速道路かと言われると疑わしいものがあります。なぜなら、規制速度は一般道より10k/h高い70k/hの道路がほとんどでしかも対面通行です。そのような中途半端な形で整備するなら、いまある道路、高規格道路の規制速度の緩和、および現道を高速で走れるように改良するだけで、高速化が可能な区間が多いのではないか?と思います。

高速道路空白地帯という発想はいらない
高速道路のない地域のことを高速道路もしくは高規格道路空白地帯と呼ぶことがあります。この地域には高速道路がなくて不便だから、一刻も早く高速道路の建設してほしいという種の話です。


しかし、この発想は高速道路があることが一種のステータスであり、ないとその地域がまるで取り残された地域かのようなそういう印象を抱きがちです。高速道路がないと不便と言いますが、本当にそうなのか?実際のところ、一般道が整備されているとか、特急列車があり飛行機がありで、実はなくてもそんなに問題にならない地域だったりします。
あと高速道路があったとしても不便な地域ってありますからね。あっても有料で普段は使わないから、結局今までどおり一般道を走るケースとか、そもそも高速道路が毎日渋滞を引き起こしていて使い物にならないから、一般道に迂回しているケースとか、その一般道も混雑していて、もう車よりも電車を利用した方が便利なケースだってあるわけです。


しかしながら今の道路事業は、その辺りのことはあまり考慮されず、とにかくこの空白地帯に高規格道路を建設して、空白地帯を解消させようという発想が強いと感じます。そして高速道路が造られた地域は「もうあるからいいだろう?まだない地域に建設するのが優先だ」ということで、新規建設を優先し、改良工事を後回しにしていると感じます。

しかし、高速道路のあるないに関わらず、必要性の高い路線はあります。たとえば新東名高速道路は、既に東名高速が並行しているから必要ないと言われていましたが、実際に開通したら東名の混雑の9割は解消し、東名高速は走りやすくなり巡航速度も上がりました。東名の交通量は当時は完全にパンクしており、東名を走った人であれば誰もが必要だと感じたはずです。自分が東名沿線に住んでいるのでなおいえますが、東名の交通量が半分以上減ったのは大きなインパクトがありました。確かに新東名にコストをかけすぎたという点はあるでしょうが、大きな効果があったことは否定できないでしょう。

参考動画:


東名高速道路(新東名開通前の動画) 他の方の動画を引用させていただきました。

つまり、高速道路はあってもさらに高速道路が必要な地域もあるし、その逆もあるということです。

前述しましたが、高速道路を建設しなくても一般道の規制速度を引き上げる、もしくは国道を少し改良するだけで高速化が可能な路線は全国的に見ると少なくありません。

ここで海外の道路事情をあげてみると、大陸国家や人口の密度の低い国は、全国に高速道路網を縦断させることを諦めて、本当に必要な地域にのみ高速道路を造り、残りは一般道をそのまま利用しています。カナダは全土に高速道路はないですし、オーストラリアやニュージーランドも同じです。島国のイギリスでさえも交通量の少ない地域は一般道をうまく利用しています。

参考ツイート



アメリカのように全土にインターステイトハイウェイを建設した例もありますけど、あれは例外です。中国も今急ピッチで高速道路の建設が進んでいますが、あれは急速に経済が発展しているからできているわけですよね。逆に、中国の経済成長がマイナスになり、日本のように低成長で人口が減少したら全路線を維持できるのでしょうか?

ドイツやフランスは全土に高速道路が縦断していますが、国土が狭く、平坦な土地が多いので可能だったのでしょう。国力の大きさ、建設コストが日本ほど高くつかないなどの事情も幸いしたのだと思います。

基本的に新しく建設するよりも、今ある道路を改良する方が基本的にコストはかからないし、建設期間も短くてすむので、後者の方が理にかなっています。

日本の場合国土は狭いですが、高速道路建設には多額のお金がかかります。これは建設コストに加えて、耐震対策や高い用地買収費用、さらに山間部が多い地域ではトンネルや高架を多用する傾向が強いため建設費用が高くなるのでしょう。ですから、全土に高速道路を建設するとなると、途方もないお金が掛かることになります。そして、今の日本の財政事情も考慮すると、全土に高速道路を建設するのは非現実的です。

あと前述しましたが、高速道路を建設してもそれが対面通行で規制速度70k/hだと意味がありません。だって並行して60k/hで走れる一般道があるのに、新しく建設した道路は、一般道と同じ対面通行の道路で規制速度は+10k/hしか高くないわけですからね。移動時間が5分短縮しますと言われても、5分なんてそんな大きな差ではないでしょう。

さらに、交通手段には自動車以外の手段もあります。あまり高規格道路ばかり建設してしまうと、自動車社会に拍車をかけ鉄道やバスを利用しなくなる人が増えてしまいます。人口の少ない地域の場合、ただでさえ少ない鉄道需要がゼロになり、鉄道廃止の危機に追い込まれる可能性もありますね。

現道改良とは何か?
ここで現道の改良について詳しく書いていきます。単純に言えば今ある道路をより走りやすくすることです。改良工事にはおもに以下のようなものが当てはまると思います。

・一般道を高規格に改良し走りやすくする。
・路肩を広げる。
・車線幅を広くする。
・左折・右折専用レーンを設け、直進車と曲がる車との緩衝を防ぐ。
・合流レーンを設け、沿線の道路から本道へ入る車と直進車との緩衝を小さくする。
・交差点を立体交差にする。
・部分的に追い越し車線を増やす。
・車線数を増やす。(断続的に片側2車線にする。)
・中央分離帯を造る。
・集落のある部分のみバイパスを建設する。

まとめると、より高速で走りやすいような道路に改良するということです。

参考1:
2017y07m08d_201001043.jpg
国道1号、富士由比バイパスにある左折および合流レーン。

参考2:

改良された稚内の国道40号(動画では3:00以降)、上記は日本の中で現道を改良した数少ない事例です。他の方の動画を引用させていただきました。

参考3:
2017y07m08d_202206203.jpg
ニュージーランドの改良工事中の国道1号線。片側2車線化工事を行っています。


オーストラリアやニュージーランドの場合、シドニーやメルボルン、オークランドなどの大都市近郊は高速道路にして、そこから離れた近郊では、新しく高速道路を建設せずに、いまある道路を改良して高規格にしているケースが多く見られます。

日本のケースで考えると、たとえば北海道の場合、もともと道路規格が良いため、人口の少ない地域は上記の国道40号のような形で国道を整備することが可能です。つまり、国道を少し改良するだけで80k/h以上で走行することが可能な道路ができます。

本州の場合、集落が多い地域を通ったり、山間部を走ったりでスピードが出しにくい道路が多いですが、その分、移動距離は北海道に比べると少ないですから、一般道であれば60k/h~80k/hくらいで移動できるように一般道を改良するだけで十分です。

・信号の撤去、ラウンドアバウトの設置
一般道で旅行速度を下げる原因の1つに信号機があります。都市部ならまだしも、郊外の人口が少なく交通量も少ない交差点に信号が設置されているケースが多く見られ、信号の停止時間によって移動に時間がかかるケースがあります。たとえば、信号の停止時間が1分だとして、それが10箇所あれば10分が停止時間になり、それだけで10分のロスになります。
よくバイパス建設で10分の移動時間短縮と言いますが、仮に信号がすべて撤去されてラウンドアバウトになれば、高規格道路を建設するまでもなく10分程度の移動時間短縮が可能になり、高いお金をかけて道路を建設する必要性を問われるでしょう。



現道改良としては直接的なものではありませんが、幹線道路であっても交通量が少なく見通しがそれほど悪くない交差点から、信号機をなくしてラウンドアバウトにすることで、移動時間の短縮、中長距離移動のスムーズ化が可能になると思います。
なお、ラウンドアバウトのメリット・デメリットなどについてはこちらの記事も参考にしてください。

参考:
2017y07m08d_202736045.jpg
ニュージーランド、郊外の国道のラウンドアバウト。


・新規高規格道路の建設
現道を改良するといっても集落を走る場所や、山間部などの急カーブや急な坂で現道改良が困難な地域、また集落が続いており、現道改良をするよりバイパスを造ってしまった方が良い場合は、新規に道路が建設されます。これも現道改良の部類に入ります。

日本の場合、国道の改良とあわせて、将来的には高速道路の路線としても機能させることを目的として多くの高規格道路が建設されています。たとえば三陸自動車道や山陰自動車道はその例ですね。

日本の各地の道路事情を見てみると、特に本州は前述したように山がちな地形で集落も多く、一般国道の規格も低いため、現道改良は難しい、もしくは改良してもさほど効果がないため、結局新しく道路を建設したほうが良いケースが多いです。
たとえばリアス式海岸の三陸地方を走る三陸自動車道は、国道45号を改良することは難しいうえに、津波による被害が大きかったため、新しく自動車道ができたんですね。山陰地方の山陰自動車道のうち鳥取~出雲にかけては並行する国道9号が多くの集落を通り交通量も多いため、多くの場所で国道9号のバイパスとして造られました。このようなケースは、その地域の幹線道路の改良に貢献したという意味で、無駄な事業ではないでしょう。必要性はあったと見ています。

しかし、全線通して建設する必要はなく、ネックになる部分だけ造れば良いというケースも多くあるし、国道の改良だけですむ場合もあります。具体例を上げます。

例 三遠南信自動車道国道474号.E69)
route474.png
引用:国土交通省浜松河川国道事務所より

この道は浜松から飯田市への高規格道路として計画された道路です。しかし、山間部を通るため交通量が少なく、にも関わらず建設コストがかかるため必要性が問われる路線でした。早期に全線をつなげたいという思いがあり、上記の一部路線は国道152を改良し、現道活用とする方向で決まり、結局全線を通して高速道路を建設することはなくなりました。

この三遠南信自動車道ですが、本当に必要性が疑わしい路線だと思います。浜松~飯田の移動といっても、東名・新東名・東海環状道・中央道を利用すれば高速で移動できるからです。一般道であれば浜松いなさ~鳳来峡まで三遠南信道、それより先は国道151号を利用すれば良いでしょう。まあ、新東名~国道151号は浜松までのルートが短縮できたので建設されてよかったでしょう。ただ、豊橋方面との移動も考慮するなら、豊橋~豊川~新城の国道151号を高規格化して東名、新東名と接続した方が良かったとも思います。

単純に長距離移動の需要で考えた場合、すでに移動ルートが確立しているし、有料ではあるけど高速で移動できるから、必要性が全く感じられない道路だということです。

一方で、沿線の道路状況が良くないため必要という意見や、災害時の緊急路線として必要という意見もあるでしょう。しかし、それなら国道473号・国道152号などを改良して走りやすくするだけでも事足りるはずです。青崩峠を越える道路が必要という意見もあるでしょうが、そこもその峠部分だけを建設すればよいだけです。むしろそうすべきだったと思うし、結果的にそうなっていますからね。

総括すると、この道路に関しては、現状の一部現道活用、一部は高規格道路として建設する方向でよいと思います。

まとめ
高速道路を全土に縦断させるという構想は悪くないと思いますが、今の日本の国力からしてもそれは難しいと思います。もっとも、今の道路事業を見ると現道改良という方向性になりつつあります。しかし、形式的にはそうなっていても、依然として新規道路の建設を重視していることに変わりません。

そうではなく、もっと今ある道路を有効活用する方向にシフトする必要があるのです。道路事業を行う際に はじめに今ある道路の改良・有効活用を考え、それが駄目なら新規道路建設を行うというプロセスです。

高速道路のあるなしにとらわれるのはやめて、大陸国家のように必要な路線は高速道路としてしっかり整備して、それ以外の路線は現道を活用することが日本の道路事業には一番理にかなっていると思います。



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[C110] 有料道路の無料化も必要。

個人的には有料道路の無料化は進めるべきだと思います。
とは言っても高速道路でなく八王子バイパスや西湘バイパスなどだが。
八王子バイパスの有料道路区間が無料になった影響で旧道区間の利用者が大きく減少し、その分、八王子バイパスに移行した事例があるから以下の条件で無料化するか否か決めても良いだろうと思います。
以下の条件は・・・、
1.交通量が1万台以下の区間。
2.交通量が少なく、尚且つその道路がダブルネットワークにならない道路。(なる道路はどちらに行っても同じ料金にする為、料金体系変更して有料)
3.八王子バイパスや茅ヶ崎中央IC以西の新湘南バイパス、播但有料道路の福崎IC以北、猿投バイパス、雁坂トンネル、京奈和自動車道みたいに沿線の渋滞緩和に役立てる道路。
これらの条件で無料化できる部分は無料化すれば新規の道路は幾分か減ります。
但し、東金道路や横浜新道、第二京阪道路みたいに渋滞する道路は安くした上で有料のままにする。

鉄道にしても地方や平日日中みたいに混雑しない鉄道路線や時間帯は転換クロスシートを積極的推進して居住性を向上する。
個人的には静岡地区のロングシートやJR東の新潟、東北地区などでは転換クロスで充分な上、居住性を上げられるからです。
無理に東京に合わせてロングシート化は利用者減少を加速しなねない。
利用者に合わせて椅子を変える事が鉄道利用を上げる要因になります。
そして尚且つ駅の高架化は道路や駐輪場を増やせるのでペストリアンデッキや橋上駅舎を作るより、高架化を積極的推進すればかなり変わってきます。

あとは酷道、険道と言われる区間をバイパスを作る事で高速道路にこだわる必要がなくなると思います。
具体的には299号の飯能から佐久穂町間のバイパスや469号の大石寺以西のバイパスの建設、道志みちや横浜伊勢原線の改良などが挙げられます。
こう行った道路にバイパスや拡幅工事をすれば高速道路は無理に作る必要性は無くなります。

余談ですがドイツの高速道路や鉄道の大部分はナチスが作ったから恵まれた環境になったのだと思います。
戦後になるとドイツの道路や鉄道建設費は緊縮財政の影響で激減し、そう行った道路や鉄道は今はボロボロになり掛けています。
欧州ではナチスを嫌われているが、ドイツの高速道路や鉄道が恵まれたのはナチスのお陰なのは何とも皮肉です。

因みにロシアはモスクワ〜ペテルブルク間の高速道路を建設しているが、未完成区間も多く主要な高速道路なのにほぼ全線片側2車線で建設されます。
ロシアは対面は少ないが、高速道路はモスクワなどの都市部を除いて片側2車線なのは良くないかと思います。
ロシアも大陸国家だが、国土が広く雪にやられやすい為、道路整備が遅れているように思えます。

長文、失礼しました。

[C111] Re

個人的には有料道路の無料化は進めるべき>
これは次にあげる記事でも書きました。有料道路を無料道路にすれば、通過交通がそちらに流れるので効果があるということですね。八王子バイパスは有料時代にいきましたけど、現道を走った時に市内を抜けるのに1時間かかりました。それが改善されているというのは良いことですね。

交通量の目安ですが、僕は1日当たり2万台とみています。ただ、これはあくまで目安で2万台を超えていても、1つの路線全体を無料にした方が良いケースもあるので、あんまりこだわらないようにしています。播但連絡道は全部無料にしてもよいんじゃないかと思います。

シドニーに住んでいた時の電車はほとんどが二階建てのクロスシートで快適でした。ロングシートって個人的には嫌なので、僕もそうしてほしいですね。あと、二階建てにすればさらに良いと思います。

醜道>
今後は高速道路建設より、そういう道路の改良をメインにしてほしいです。もっとも、道路改良という名目で高規格道路の建設が進んでいるわけですけど、道志道のような道路だったら60k/hぐらいで走れて、ところどころに追い越しレーンがあればよいですね。あとは全線対面通行確保。


ロシア>ロシアは土地がありそうなので、その気になれば6車線以上の道路はできそうな気がしますけどね。まあ、そんなに経済が豊かではないのもあるんでしょうね。
  • 2017-07-11 16:00
  • hiro1100
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hiro1100

Author:hiro1100
Hiro 1100
ドライブ、旅行好きの30代。
道路、運転マナー、海外の道路事情について、自分の思うこと、経験に基づくことを書きます。

2005年に原付で公道デビューし、2009年に4輪デビュー。2014年にオーストラリアへ渡航し、海外ドライブ開始。日本と海外を行き来しながら、生活を始める。
バイク、車で走った距離はおそらく10万キロ以上。1回も交通事故を起こしていないのは自分の自慢です。

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